★旧ロシア領事館（函館市）
ペリー来航をきっかけに国内初の開港場となった函館（当時は箱館）。日本とロシア間で１８５４年（安政元年）に和親条約が交わされ、その４年後に在箱の初代領事としてゴシケビッチが着任します。当初は、現在の弥生小学校（市内弥生町４）付近にあった実行寺内に仮領事館を開設。１８６０年（万延元年）、ハリストス正教会の敷地内に正式な領事館を構えるも、１８６６年（慶応２年）に起きた火災で焼失し、一時は民家などで執務を行っていたそうです。１９０３年（明治３６年）、現在地で始まった新築工事は、翌年の日露戦争で中断され、完工したのは１９０６年（明治３９年）のこと。それも束の間、１９０７年（明治４０年）に大火に見舞われます。その直後から進められた再建工事によって、１９０８年（明治４１年）に完成した建物が現在の建物です。
ロシア革命後にソ連領事館となりますが、１９４４年（昭和１９年）に最後の領事が本国へ引き揚げると閉館されてしまいます。その後、所管していた外務省から１９６４年（昭和３９年）に建物を購入した函館市は、その翌年から１９９６年（平成８年）まで青少年宿泊研修施設として一般開放しました。現在は外観のみ見学が可能です。
この建物は、同志社大学クラーク記念館（重要文化財、京都市）を手掛けたドイツ人リヒャルト・ゼールによるもの。外観は、赤レンガの壁面と、２階部分の白い漆喰の縦横の縁取りや、玄関部分のコーナーストーン（隅石）とのコントラストが、とても印象的です。玄関部分の１階は唐破風様式で、組み物を見せる柱頭など、和風意匠との組み合わせが異様な感じを受けます。屋根は当初は瓦葺きだったそうです。正面側の無骨な外観に対して、裏面の木製窓枠は繊細で優美。１階のテラスからは函館港内を眺めることができるそうです。内部は公開されていませんが、玄関ホールの柱上部に施された彫刻や、美しい曲線を描く階段の手すりなどが、往時の華やかな雰囲気を伝えています。
※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、函館タウンなびさま（ＨＰ）よりお借りしました。
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