(瑞泉閣は1911年(明治44)年の建築。風格ある起り(むくり)破風の正面玄関)
★日本製鋼所室蘭製作所瑞泉閣(室蘭市)
日本製鋼所は、1907年(明治40年)に北海道炭礦汽船(株)と、イギリスのアームストロング・ヴィットヴォース社、ヴィッカース社の3社の共同出資により、室蘭市に設立されました。日露戦争後、兵器の国産化が緊急の課題となり、海軍の薦めもあって、当時同盟関係にあったイギリスの兵器メーカー2社から技術指導を受けることになりました。
(食堂部分。この部屋で多くの皇族や著名人を迎え入れた)
1909年(明治42年)に室蘭港に面する工場敷地を埋め立て、1911年(明治44年)までに主要施設の建設が完成しました。瑞泉閣は、1911年(明治44年)8月の東宮(皇太子、のちの大正天皇)行啓の宿泊所として、工場敷地に隣接する茶津山の中腹に建築されました。構造は木造平屋、設計者はフランス人と伝わっています。
(こちらの建物は、会社の性格上、皇族のほか、軍人の来訪、宿泊も多かったそうです)
建物は、洋館と和館が連結並置された構造となっています。風格ある起(むく)り破風の玄関から入って左側へ廻ると、洋室に繋がっています。洋室の外壁は撥ねつけモルタル仕上げとなっていますが、当初は平滑な仕上げだったそうです。
(暖炉の上には、3社の頭文字「T」「A」「V」を組み合わせた社章が残っています)
外観の無骨さとは対照的に、洋室の内部は華麗な装飾であふれています。各部屋への出入り口の額縁はルネサンス様式ですが、内装はロココ調。洋室は食堂、居間、寝所の3室で構成され、各室に大理石を使った暖炉が設置されています。暖炉の上には共同出資3社のそれぞれの頭文字「T」「A」「V」の3文字を組み合わせた社章が見られます。
(天井は、白ペンキ塗りのスチールシーリング仕上げになっています)
(八角形の張り出し洋室。ここから見る工場群の眺望は抜群です)
天井は、白ペンキ塗りのスチールシーリング、壁紙には金泥置花模様、海老茶色の緞帳、花模様の絨毯と、装飾にあふれた空間となっています。北端の八角形の張り出し洋室の外壁は白一色ですが、当初は吹きさらしのベランダだったそうです。ここから工場施設群を一望することができます。(2017年8月、現状を確認)
(こちらには、菊の御紋が残っています。終戦直後、
GHQからの指摘を避けるため、社章を被せて隠したそうです)
(廊下に面する障子ガラスは創建当時のもので、ガラス面が微妙に波打っています)(寝所。左に映り込んでいる書は紀州藩主徳川頼倫によるもの。右側の書は明治の元勲後藤象二郎によるもの)(こちらの建物は原則非公開ですが、1年に1度程度公開されてます)↓瑞泉閣の内部に常設展示されている書などの作品の紹介については、こちら※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、ブログ運営者がみずから撮影したものです。↓いつも足しげく訪問していただき、ありがとうございます。きょうも1クリック、よろしくお願いします。